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about daily life , just about photograph. 日常のこと。つまり写真のこと。


2016.01.23

once

パトリシア・フィールドに会ったのは確か7、8年前のこと。

映画「プラダを着た悪魔」や「セックス・アンド・ザ・シティ」の衣装、

そしてヴィダルサスーンでの安室奈美恵さんとのキャンペーンのPV等、

その仕事を幾つも観ていた僕は、

まさかパトリシア本人を撮る機会が訪れるとは思ってもいなかった。


取材当日、僕らの時間はちょうどお昼頃。

持ち時間はインタビューを含めて15分。

記事と併せて掲載するポートレートの撮影時間は実質1、2分程度。

朝から既に10本近い取材を受けて、やや疲れ氣味とのことで、

ささっと撮って別室ではインタビューのみの収録という話だった。


現場は何とも言えない緊張感と静けさで、とても重い空氣が充満していた。

前の組の取材が終えて撤収作業をしている中、真っ赤な髪のパトリシアが現れた。

まず僕のクライアントとインタビュアーが先方のスタッフの紹介でパトリシアに挨拶をした。

同行のフォトグラファーが挨拶する時間等、本来は無かったのだろうけれど、

単純にパトリシアの仕事のファンでもあった僕は、図々しいと思いつつも、

それらの映画やキャンペーンでの仕事にとても感動し、沢山の刺激を受けていること、

そしてその貴女をフォトグラファーとして、今日、こうして撮影出来ることがどれ程光栄なことか、

拙い英語で一氣に話し、自分の名刺を手渡した。


僕の名刺を手に、僕が着ていたルイスレザーのブルーのサイクロンを眺めながら

「あなたの名前はGOって言うの?いいブルーのレザージャケット着てるわね。」

「さぁ、GOはどんな風な写真が撮りたいの?」と、柔らかく優しい表情で聞いてきた。

待機時間に撮ったテストショットを一眼レフの液晶で見せて、こんな感じでと伝えると、

「じゃ、此処でいい?」と、一言。

そしてラックに掛かった服を「わたしの好みに並べ換えてもいい?」

もちろんと答え、構図を考えながらカメラを構えていると、

「GO、こんな感じでどう?」とこちらを見た。

そして僕は直ぐに一度だけシャッターを押した。

その一度のシャッターで、もう今日はこれで充分、そう思えた。

PatriciaField003_blog.jpg

現場のスタッフに「あなた、一体彼女に何を言ったの?こんな笑顔、今日初めてよ」と言われたけれど、

特別なことは何一つ。

ただ心からの敬意と、今、こうして撮れる喜びを伝えただけ。


「もういいの?まだ好きなだけ撮っていいわよ」と、

少し寒かったのに、会場の外でも数カット撮らせてくれた。


撮影後のインタビュー中も、好きなだけ撮っていいわよと言われ、

こんな機会もう無いかも知れないと、何度もシャッターを切った。

終始ご機嫌で、途中から煙草を吹かし始め、

撮影と併せ当初15分という枠を越え、30分程パトリシアの話は続いた。

PatriciaField013_blog.jpg

インタビューが終わり、帰ろうとすると、ここでも撮る?とソファに座ってポーズを決め、

笑顔を向けてくれた。


先日とある場所での会話の中、この時のことをふと想い出し、

改めて久し振りにそのインタビューが掲載されたサイトを探してみたのだけれど、

そこは残念ながら既に閉鎖されてしまっていた。

でもせめて写真だけでもと、保存している写真を探して全て見返してみた。

撮影した当日のこと、この撮影の依頼の電話があった時のこと、

そして、その時に感じた感情まで、全てとても鮮明に想い出した。


当たり前のことだけれど、

この新鮮な一瞬一瞬の時の流れ、全てが一期一会。

全てがいつも初めてで、

それが写真になる。

技術があることが勿論前提なのだけれど、

写真とは全て関係性なのだと、こういうことがある度、

想い出す度、いつも改めて実感させられる。


そしてやっぱり写真はいいなぁと、心から思う。
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posted by GO at 00:00 | Photograph